罪でないものを罪に感じる意識によってどこまでも深く落ち続けてゆく主人公の抱える苦しみの周囲に人生の真実をいくつも描き出す。シェイクスピアや映画「サンセット大通り」を持ち出すといえば雰囲気は伝わるか。鋭く真実味を帯びた金言は時に陳腐にも感じられるくらいで、旧世界と新世界の対比もしつこいが、あまりに重すぎる近代的な自意識の葛藤に苛まれる不安定な主人公の語りに最後の最後まで搦め取られながら、どこかそこに瑞々しい煌めきも見出してしまう。目を背けたい、蓋をしている過去のひとつやふたつ誰にでもあるだろうが、それが噴出してきたときに、この本を読んでさえいれば再起不能になることはないだろう。そんな予防注射のような一冊。