2022-12-11

又吉直樹『火花』

人間ドラマとしての面白さに加えて、街や人を描くときに、その目の付け所や描写の面白さがやっぱり言葉を使う職業の人だなと思ったし、一気に読ませられて、きっと何百時間も推敲を繰り返したのだろうと想像した。いくつかすごいなあと思ったところを抜粋する。

・渋谷駅前は幾つかの巨大スクリーンから流れる音が激突しては混合し、それに押し潰されないよう道を行く一人一人が引き連れている音もまた巨大なため、街全体が大声で叫んでいるように感じられた。人々は年末と同じ肉体のまま新年の表情で歩いていて、[…]

神谷さんが相手にしているのは世間ではない。いつか世間を振り向かせるかもしれない何かだ。その世界は孤独かもしれないけれど、その寂寥は自分を鼓舞もしてくれるだろう。僕は、結局、世間というものを剥がせなかった。本当の地獄というのは、孤独の中ではなく、世間の中にこそある。僕達はきちんと恐怖を感じていた。親が年を重ねることを、恋人が年を重ねることを、全てが間に合わなくなることを、心底恐れていた。自らの意思で夢を終わらせることを、本気で恐れていた。

僕達はきちんと恐怖を感じていた。親が年を重ねることを、恋人が年を重ねることを、全てが間に合わなくなることを、心底恐れていた。自らの意思で夢を終わらせることを、本気で恐れていた。